ラフマニノフ「死の島」
ラフマニノフは「死の島」(The Isle of the Dead)と言う曲を書いている。
ベルリン美術館(2011.11.22訪問)
ベルリン美術館(2011.11.22訪問)
吾輩は滋賀県の某所で産まれた。
この家には、冷ややかな視線を吾輩に向ける先住犬が居た。かつて吾輩の祖国の植民地であったチャイナ由来のペキニーズ12歳である。
吾輩は段ボールのハウスにサークル暮らしだが、ペキニーズ(お局)はクッションベッドを与えられ、陽当たりの良い場所を占有し、自由きままに振る舞っている。
考え過ぎかも知れないが、お局は少なくとも吾輩よりも良い待遇を受けているようだ。
食事の時の匂いが吾輩の物とはまったく違う。
お局の食事は鍋から出てくるが、吾輩の食事はバケツから出て来ることを見ても明らかである。
この悔しさを晴らすために、一撃を加えてやりたいが、現状では勝ち目は無いとあきらめた。
男の妻は「こんなに食べさせて大丈夫かなあ・・」と言いながら4回も食事を作る。食事は有難いのだが、男の妻は食べた後、飲んだ後に「おくちおくち」と言って吾輩の口を無理矢理拭く。
小便の後は「おちっこおちっこ」と言って吾輩の○○を拭く。
大便の後も・・。
今や、多くの仲間が、この手のおばさんに「赤ちゃん」扱いされて暮らしていると聞く。
この夫婦には、とっくに親離れした娘が居る。
吾輩がこの地に来ることになったのもこの娘のすすめらしい。
考えようによっては自分への干渉の防波堤に吾輩を利用しようとしたのかも知れない。
娘は時々やってきて、吾輩をいじくりまわす。
その後は、冷蔵庫から肉や、海老などの食材をかっぱらって帰って行く。
吾輩の名前である「プッチ」とはプッチーニの略らしい。
この家は犬に音楽家の名前を付けるのが慣習になっておって、中でもプッチーニは吾輩で二代目になるらしい。
お局ペキニーズの名は「ベルディ」と言うから、オペラ狂いの家庭に引き取られた訳である。
人間は、重荷を抱えたり、誰かの面倒を見る事で自分の存在価値を見い出す変な動物だ。
男が料理教室でローストビーフの焼き方を学んできて以来、ローストビーフが当家の常備食材となった。
男が吾輩におやつ(乾燥肉)をくれる時は必ず糸玉を投げて持って来させる。(写真上)最初の内は、吾輩も喜んで取りに行くが、この男は限度と言うものを知らず、だんだん投げる距離が遠くなる。
吾輩はこの重い体で往復する苦労と、乾燥肉のかけらを天秤にかけた結果、乾燥肉を放棄しても良いと思い始める。
そうすると男は不機嫌になり、「そもそも犬と言うものは・・」から始まる、男の「犬論」をひとくさり聞かなくてはならない。
男は自分の事は棚に上げて「報酬は労働の対価である」という持論を崩さない。
犬がどれほど主人に忠実でなければならないか、桃太郎の話や、「盗賊の犬、帝に吠える」と言うチャイナの諺まで出て来る。
つまるところ男は、吾輩が改心して糸玉を取りに向かうことを望んでいるのだが、乾燥肉を放棄した以上、吾輩にその義務はない。
男が、しぶしぶ自分で投げた糸玉を回収に行く姿を眺めるのは実に愉快である。
次に男は、吾輩に与える予定だった肉片が手の中でベタベタする事に気付き、やり場がなく、不本意ながら吾輩に与えるのである。
この男の、この一貫性の無さが犬のしつけにとって最悪の結果をもたらすのだ。
吾輩の鼻の穴から肺までの配管は先天的に細すぎて、酸素を取り入れるにも足りず、体温を下げるにも不十分である事がわかった。(写真上)このままの体で宿敵「夏」と戦うのは、福島原発より無防備な状態にあり、強制的に換気しないと爆発してしまう心配がある。
と言うわけで今日は、早起きして動物の呼吸器専門病院に行き、精密検査を受けた。
その結果、本犬に相談もせず、突然手術の日程が決まってしまった。
気道の狭くなっている部分を3箇所切り取って、空気の通りを良くすると言う計画である。
男は「少しと言わず厚めに切って・・」などと、生ハム注文するみたいな乗りである。
生死に関わる大手術を笑いながら承諾するこの男の薄情さが許せない。
吾輩は男に「3箇所も切って大丈夫か」と抗議したが、男は「切られの与三郎は34箇所も切られて生きていたんだぞ」と言う。
話の成り行きは心外であるが、呼吸困難で逝ってしまうのも淋しい。
手術が成功すれば、息苦しさから解放される・・。
が、必ずしも成功するとは限らない・・。
吾輩は気が重い。
夕飯のローストビーフがお局の分より厚かったり、スリッパをかじっても蹴飛ばされないのはどこかおかしい。(写真下)
男の部屋からはベルディのレクイエムが聞こえて来る。
男の仕事の性質上、吾輩は会社の備品として購入されたらしい。今回の手術費用は備品の修理費だと男は主張する。つまり吾輩の気管支の修理代(吾輩の値段の3倍以上)は税務上は経費とは考えられないと言う指摘である。
んんん・・、馬鹿こけ税理士め。
あったかい血の通った吾輩をプリンターのたぐいと同じに扱うのはやめんかい。
「買い替えるのが筋」とは何たる暴言。中古の吾輩の行き先はどうなるのだ?
そもそも君はこの家に対する吾輩の貢献の度合いっつうものを考えてみたことがあるんか?
要するにだ、吾輩の能力や存在価値に着目すれば、手術代が幾らであろうと必要経費であることは明白になるのだよ。
よく聞きたまえ税理士君。
第1に プリンターが留守番するか。
第2に プリンターの寝顔が可愛いいか。
第3に プリンターがヨーグルトのカップをきれいに舐めるか。(写真上)
第4に・・・・・。
(ここらで、あんまり役に立ってないことに気付く・・・)
何だねえ・・確かに手術代全額の経費算入は君の仕事上の立場では容認できないかも知れないね・・ハハハ。
50%くらいの自己負担と言う線はどうかな・・ハハハ。
自慢するようなことではないが吾輩はかなりくさい。(写真上)
デパートの(人間の)子供服、玩具の売り場で。
おい、吾輩の好物は柔らかい「牛の肉」だってこと知ってるよね。
吾輩は訳あって今夜は眠るのが不安である・・。(写真上)
吾輩は「与えられた餌は残さず食べる」主義だ。男は「食べるだけ与えろ」の主義だから、因果関係は明白だ。
肥満の原因は他にもある。
気まぐれのお局は好き嫌いが激しく、昨日食べたものを今日は喰わなかったりする。
お局用に用意された食材で、お局が首を横に振った食べ物が吾輩の食器に廃棄される。
吾輩はディスポーザーか。
甘く見るな、バカにすんな。
チャイナ犬が食べ残したものを大英帝国の国犬が有り難がって食べるとでも思ってんのか。
正直言って、有り難い。
悔しいけれど、嬉しい。
ディスポーザー、大歓迎。
ハムやソーセージ、焼き鳥やローストビーフ、卵、栗、焼き芋などの味を知ったのは、お局の気まぐれのおかげであることを忘れてはならない。
犬にとって食べ物に対する執着は祖国への「プライド」よりも重いのである。
願わくばお局の「好き嫌い」が今後も続いてくれますように。
結果として、吾輩は立ち上がるのがおっくうになって来た。(写真下)
歩けば、荷物を積み過ぎのトラックみたいに左右によろよろする。
吾輩は爆睡しておって東北の大地震をまったく知らなかった。数時間の後、腹が減って目が覚めると世の中が大混乱していた。(写真上)
「何の役にも立たない犬だ」
「お前には危機管理能力の欠けらも無い」
「この先余震が来るから自分の身体は自分で守れ」
と夜の避難行動に備えて頭にライトを付けられちまった。(写真下)
「バカにすんな、吾輩だって、いざと言う時には役に立つど・・」と男に抗議をすると、
男が吾輩の体を見ながら、「役に立ちそう・・いざと言う時にはな・・」と言う。
頭のてっぺんに小さなかさぶたができて、痒くて掻いていたら傷になって、更に痒くなって、もっと掻いたら穴が広がり、血が出て、男に「馬鹿かお前は」と言われる大きさになった。
医者に行って、いじくりまわされて、「エリザベスカラーを付けましょう」と言う事になった。
エリザベスと言えば吾が祖国の女王ではないか。
女王陛下の勲章でも付けてくれるのかと思ったが、この始末。
「ガタン」と窓に何かがぶつかる音がした。
男の妻は、お局と吾輩を平等に扱おうと考えていることは評価するが、吾輩から見ると「深刻な差別」が存在する。
食いしん坊の吾輩にとって食卓テーブルの上は楽園である。
(人間の)食事の準備ができたら、吾輩も定位置へ急ぐ・・。(写真上)
男の部屋から、小型犬の悲鳴のような声が聞こえて来る。
女のうまい扱いかただと?(写真上)
ひでえめにあっちまった。
「蜂に刺されるから引っこめとけ」と男は言うが、吾輩の舌は眠っている時でも少し出ている。
朝、男の妻が男に「今日はプッチの誕生日だから・・」と言ったら、
デパ地下で焼き鳥のいい臭いがしていたらしく、男の妻が「吾輩とお局用」に買って来てくれた。そもそも男は「チキン」が好きではないのであるが・・。
何と、最初に「これけっこう美味そうやな」と言って男が1本食べ。
「これはどうかね」と言って男の妻が1本食べ。
「ネギは犬には毒」と男が2本食べ。
「胡椒も良くない」と男の妻が2本食べ。
夫婦でほとんど完食。
おい、ちょっと、ちょっと待てよ、冷静に話し合おうではないか。
あんなに沢山あったのに、何たること。
結局、吾輩とお局には、タレをお茶で洗い落とした笹身の破片がひとつか。(写真上)
レバーも手羽先も臭いをかがせただけなんか。
殺気立つ吾輩を見て男が言う。
「今ごろ東北地震の被災地では、犬が腹を減らして・・」
うるせえ、お前に言われたくねえよ。(写真下)
吾輩は当面このサークル内で過ごすことになっている。(写真上)広さの点ではさほど不満はないのだが、お局がサークル越しに吾輩を見る時の小馬鹿にしたような態度が看過出来ない。
弱き者を抑圧して、一部の特権階級だけが自由を謳歌するやり口は、まさしくチャイナ的である。
弱者の犠牲の上に成り立つ自由なんぞは真の自由ではあり得ない。
もちろん吾輩は「お局のように常時自由の身にしてくれ」と男に要求しているが、大小排泄物の適正処理問題が解決するまでは認められそうにない。
吾輩の常時自由化問題には、排他的既得権益を主張するお局が最後まで反対するだろう。
話し合いでは拒否権を発動する可能性があり、それなりの根回しが必要だと思われる。
人間を丸め込むのはたやすいが、権益にどっぷり浸かった犬を正しい判断に導くのは容易ではない。
とは言うものの、お局とて要介護の後期高齢犬、吾輩の体格は脅威のはずで、対立路線を放棄して、柔軟外交に転ずる可能性も否定できない。
男が倉庫から変な機械を引っ張りだしてきた。
ん・・気持ち良く眠っている吾輩に、突然ぶつかって来る奴がいる。ゴミくず回収犬「ルンバ」だ。
こいつはアメリカ原産の使役犬の一種で、吾輩の抜け毛を掃除するために男が飼育を始めたらしい。
あたり構わず歩き回って拾い食いする下品な奴だ。
ピポパポと変な鳴き声が不愉快である。
思えば・・掃除するためだけに作出されたルンバはあわれな犬だ。
吾輩とて、完全に自由が保証されているわけではないが、こなさなければならない「仕事」はない。
それでいて眠い時には眠り、腹が減る前には餌が来る。
お前なんぞは、足のゴムがすり減って、吸い込む力が衰えただけでぶち捨てられてしまう運命にあるのだ。
つまり、役立つ奴は役立たなくなったら捨てられてしまうが、もともと役立たない吾輩は捨てられることがないって訳よ。
肩ひじ張って「役立とう」などと思うから、働きづめに働いても報いられないのだ。
おろかなルンバよ、よく聞け。
役に立たないからと言って「無用」なわけではないのだよ。
ま、まだまだお前は「人間並み」ってことよ。
男の妻が「ふき掃除するロボットは無いのかねえ」て言ってたぞ。
お前なんか、すぐに飽きられっから・・。
イギリスやアメリカでのブルドッグの位置づけは「ノンスポーティング・ブリード」つまり狩猟の役に立たない犬種に分類されている。(写真上)
吾輩は犬生の先輩として、ちみ達にひとこと言っておこうと思う。
吾輩が来る前は、この家はお局の天下で、我がままに一日のんびり暮していたらしい。お局が新入りの吾輩に敵意を抱くのも無理はない。
最近は「吾輩が一時的な客ではない」とあきらめたのか、お局はかなり柔軟になってきた。
尖閣ソファーには、お局が上陸中にも登れるようになった。(写真上)
ただし吾輩の友好のしるしである「ほおずり」や「ペロペロ」は拒否されたままである。
吾輩のおかげで、お局以外の関係者にも少なからず負担をかけているようである。
吾輩は「きれい好き」でトイレシーツが汚れていると、そこでは「しない」ので、トイレシーツの廃棄量が多く、ゴミ出し当番を男が引き受ける事になった。
男は「近所の人に会うのが嫌だ」と言っていたが、誰が近所の人かも分からないありさまで、
「誰にでも挨拶してれば問題ないのよ」と妻に言われ、しぶしぶ30メートルを早足で往復する。
最近はプラスチックごみも運ぶようになったが、「これは燃えるごみか?プラか?」と、
自分の担当となるといちいちうるさいのも男の特徴である。
「こんな事は市の仕事ではないか」「市民税を返せ」などと八つ当たりもする。
閻魔「お前はアイスランドの○○岬へパフィン(ニシツノメドリ)の写真を撮りに行ったか?」
吾輩は1日に何回か男の仕事部屋を巡回するが、
「今なら年会費無料」などと言う甘い言葉にのって作ったカードで財布が一杯になっている。
国際法?、歴史認識?、馬鹿こけ。んなこと言ってる暇があったら、とにかく上陸して居座っちまえばいいんだ。(写真上)
そこらじゅうに吾輩のにおいをこすりつけて誰も近寄れないようにすれば事実上吾輩の領土になるのだよ。
すでにお局はこのソファー上陸をあきらめたではないか。
吾輩のよだれでベタベタのおもちゃの配備におじけづいて、人間さえも座らなくなったではないか。
法律や話し合いなんぞで紛争は解決しないってことよ。
つまるところモラルよりチカラなんだよチカラ。
ん、下の写真?
トイレじゃない所でウンチして怒られてるところ・・・・しいましぇん。
吾輩は中国の政治は嫌いだが中華料理は好きである。
トレーナー君、君が職務熱心なのは分かるが、見当違いの「ネタ」はいかがなものか・・。(写真上)
吾輩の寝床を囲っていたサークルが取り払われ、ほぼ自由の身となった。
災害対策を真剣に考えなくてはならんご時勢である。非常時に持ち出すものをリュックに詰めて用意しておく事になった。
いざと言う時には男がリュックを持ち、
男の妻がベル(お局)を抱いて飛び出す手筈となった。(写真上)
・・・。
・・・。
吾輩の脳裏を、東北の被災地をうろうろする牛の姿が頭をよぎる。
何人前も喰う
騒がしい
スリッパをボロボロにする
いびきがひどい
くさい
確かに・・吾輩の避難所生活は絶望的とも言える・・。
しかし、餌の食い方は分かるが取り方の分からない吾輩には野生の生活は無理なんだよ。
男よ、心を入れ替えて賢くするから吾輩も連れて逃げてくれ。
男が「そもそもこの犬は自分の顔の実情を知らないのではないか?」と言い出した。
男の所には時々来客がある。
男の知人に不幸があり、がんの恐ろしさを聞いて帰って来た男が、人間ドックを探し始めた。
男の人間ドックの結果が送られてきた。(写真上)
男が人間ドックの待合室で雑誌を読んでいたら「年収は財布の値段の200倍に一致する」と言う記事があったらしい。それ以後、男が何人かに実際に財布を見せてもらい収入の調査をしたら、おおむね当たってるではないか。
で、強欲な男は「高い財布を持てば年収が増える」と勝手な解釈をしたのである。
(雑誌の記事はそんなこと約束してない)
男はネットで10万円見当の財布を探してみたが、常識的にはブランドものでも5万くらいの物が高品質で、それ以上は素材がワニとかトカゲとかゲテものが多くなる。
気持ち悪い思いをして10万円のワニ皮を持つか、年収との兼ね合いに悩んでおる。
で、今使っている財布を出して見たら、くたびれたウシ皮が「長年面倒見たのにワシを捨てる気か」と睨んでいるような気がして、「これで十分」と言う気持ちが強くなり、結局今の年収で我慢することになったらしい。(写真上)
原発事故のおかげで、毎日3時間停電(計画停電)する。そもそも健全な犬科動物にとって「電気」なんか不要である。
犬は人間と暮らすようになって明らかに堕落した。
いつの間にか横着な人間が作り出した「あやしい文化」に依存して暮すようになってしまった。
ああ情けない。
電気?、ガス?、水道?、んなもの誇り高き犬にはまったく不要だ。
今こそ、自然回帰の時だ、犬どもよ立ち上がれ。
目覚めよワンワン、ルソーの哲学に学べ。
ご先祖オオカミの時代から脈々と続く犬本来のアイデンティティを取り戻す時が来た。
いかさまに満ちた人間社会との決別の時が来たのだ。
・・とは言うものの、俗な人間社会にどっぷり浸かってしまっている吾輩の場合は、真っ暗な夜を過ごすのはつらすぎる。
・・と言う訳で、ろうそくの灯りを見つめながらひたすら3時間待っているのである。(写真上)
昼間は何とか我慢出来るが、夜の停電は勘弁してくれよ。
Author: wagahai
吾輩はブルドッグである。
人生に比べると犬生は短い。
人も犬も命の長さは調節できないが、幅は幾分加減できると思う。
犬生は一幕のオペラ(喜劇)である
拍手喝采の内に幕を降ろしたいものだ。